持続可能な漁業

MSC認証取得を目指す気仙沼ヨシキリザメ・メカジキ延縄漁業改善プロジェクト

株式会社シーフードレガシー、気仙沼遠洋漁業協同組合、宮城県かつお・まぐろ漁業組合、および岩手大学農学部 資源経済・政策と数理資源管理研究室(岩手県盛岡市)と協働で、日本で初めてヨシキリザメ、メカジキを対象とした「気仙沼ヨシキリザメ・メカジキ延縄漁業改善プロジェクト(Fishery Improvement Project, 以下:FIP)」を2021年3月18日より正式に開始。

気仙沼の生鮮メカジキの水揚げ量は全国一位。2019年には全国の約3,033トンのうち73%の約2,221トンが気仙沼で水揚げされています*。ヨシキリザメも気仙沼が全国の水揚げ量第一位の魚種で、ふかひれの他、身は「すり身」にして「はんぺん」などに利用されています。

本FIPに参加する、気仙沼港を基地とする近海まぐろはえ縄船団12隻は北西部太平洋海域で年間を通じて操業しており、メカジキは1,323トン、ヨシキリザメは3,706トンを漁獲しています(2019年)。

* 農水省及び気仙沼市魚市場資料より

頭と内臓はとるが、ヒレは付けたまま

頭と内臓はとるが、ヒレは付けたまま

 

メカジキを引っ張り上げる様子

メカジキを引っ張り上げる様子

北西部太平洋のメカジキ、ヨシキリザメは過剰に漁獲されておらず、資源も枯渇していません。しかし、主要漁獲物であるサメ類の資源は世界共通の資源として、保護や持続可能な利用の責務、そして漁業の透明性が国際的に求められています。そのため、気仙沼遠洋漁協は、近海まぐろはえ縄漁船が漁獲するメカジキとヨシキリザメは資源保全に十分留意して漁獲された水産物であることを国内外に広く発信し、漁業経営の安定と持続能な漁業継続を図るため、そして、漁業を通じて日本のみならず世界の持続可能な漁業の構築に貢献するため、認証取得を目指すことになりました。

<本プロジェクトで取り組む改善内容>
FIPではMSC認証予備審査で明らかとなった課題を改善していきます。本プロジェクトではMSCの認証機関として認定されているSCSによる予備審査結果のもと明らかとなった以下の課題を解決し、2026年までにMSC認証の取得を目指します。

① 関係機関への働きかけ
ヨシキリザメの資源状態については大きな懸念はないものの、持続的な利用を担保する上で重要な漁獲方策や管理基準値、漁獲制御ルールが設定されていないため、中西部太平洋マグロ類保存委員会(WCPFC)に働きかけていきます。また、ヨシキリザメを同じく漁獲する台湾等との連携、および、科学的な管理手法の評価のために、北太平洋におけるマグロ類及び類似種に関する国際科学者委員会(ISC)に協力いただくために水産庁に働きかけていきます。

② 管理確認方法の改善
予防原則に従った管理目的を持っているか、また利害関係者との関係性が透明性を持って構築されるよう意図されているかなどを、証拠資料をもって確認できるようにしていきます。

③ 漁獲情報や生態系の影響に関する情報収集の精度向上
漁獲情報に関するデータ(オブザーバーデータやログブックデータ)の収集方法を改善し、フィニングが行われていないことを客観的証拠とともに示していきます。また、混獲されやすい絶滅危惧種や保護種のデータ収集、混獲回避技術についても精度を高めていきます。

シーフードレガシーはプロジェクトの計画立案、進行を、気仙沼遠洋漁協は現場での実施主体として計画に沿って現場での改善を図り、岩手大学資源経済・政策と数理資源研究室は本プロジェクトへの科学的知見の提供を担当します。

<参加者からのコメント>
・気仙沼遠洋漁業協同組合 組合長 鈴木一朗 氏
我々近海まぐろはえ縄船は、メカジキ・ヨシキリザメを主たる漁獲対象種として中西部太平洋海域で周年操業をしています。漁獲するメカジキ・ヨシキリザメは全て地元気仙沼港で水揚げを実施し、地域経済を下支えしております。ヨシキリザメについては肉、ひれ、骨など全てが有効活用され、気仙沼を代表する産品として国内外に出荷されております。
我々は、地域の重要な産業である本漁業を永続的に経営する為にも皆様のご協力を頂きながら、資源管理等を柱とするFIPに取り組み、本漁業が持続可能であることを内外に発信しながら、MSC認証取得を目指します。

・宮城県かつお・まぐろ漁業組合 組合長 齋藤徹夫 氏
東日本大震災の未曾有の大災害を経験し、現下は見えないウィルスとの厳しい闘いを強いられる中で、私たちはあらためて漁業を含むあらゆる経済活動がこの地球の大自然のダイナミズムの支配のもとで営まれているということを再確認させられています。気仙沼のマグロ漁師は古くから三陸の豊かな海の恵みを分け頂くことで生活を立ててきました。このたびのFIPの取組は海洋生態系を守りながら、その中で持続可能なマグロ漁業を未来永劫守り続けていこうとの気仙沼の漁師の覚悟の表明であると考えます。

・宮城県 水産林政部 部長 小林徳光氏
気仙沼遠洋漁業協同組合によるこの漁業改善プロジェクトは、ヨシキリザメ・メカジキの持続的利用を確立することで,我が国近海まぐろはえ縄漁業の維持・発展を目指す、意欲的な取組です。メカジキ・ヨシキリザメの水揚げ日本一を誇る気仙沼にはこれらの魚を無駄なく利用する伝統があり,加工・流通など関連事業者も多数存在することから、地域にとっても非常に重要な取り組みになります。プロジェクトが円滑に進むよう,県も積極的に支援します。

・気仙沼市 市長 菅原 茂 氏
今般の気仙沼遠洋漁業協同組合を中心とした、近海まぐろはえ縄漁業で漁獲されるメカジキとヨシキリザメの漁業改善プロジェクトの取組は、気仙沼が誇るメカジキとヨシキリザメの持続的な利用を図り、本市の基幹産業である漁業の信頼向上にもつながるものと確信しております。本市においても、SDGs(持続可能な開発目標)の視点を取り入れた施策を推進していくこととしており、MSC認証取得を目指す皆様の先導的な取り組みには大いに期待しております。

・岩手大学 農学部 資源経済・政策と数理資源研究室 准教授 石村 学志氏
震災から10年を経た今、コロナ禍というあたらしい困難のなかでの挑戦は、持続的漁業、そして、日本や世界へ誇る漁業となる大きな一歩です。

・株式会社シーフードレガシー 上席主任 山内 愛子 氏

気仙沼遠洋漁業協同組合とその関係者が取り組むメカジキ・ヨシキリザメの漁業改善プロジェクトは、国際的に信頼されているMSC認証取得を目指し、現状の課題を広範なステークホルダーとともに解決を図るものです。特に世界的に持続可能な資源利用が課題となっているヨシキリザメ漁業で改善プロジェクトに取り組むことは、個別の漁業団体だけの取り組みではなく、世界のサメ漁業が直面する多くの問題解決に向けて極めて重要なステップになると期待されます。

参加組織:
■気仙沼遠洋漁業協同組合
気仙沼遠洋漁業協同組合は、世界有数の好漁場三陸沖を臨む宮城県気仙沼市、およびその近隣の地区の主にマグロ漁業者によって水産業協同組合法に基づき設立された業種別漁業協同組合です。平成23年3月の東日本大震災では、組合員の漁船、事務所、倉庫、居宅等々に甚大な被害を受けましたが、全国の皆様のご支援を頂き、復興へ向けて頑張っております。所属船は東北の海で、また世界の海でマグロを追っています。地域の伝統漁業「まぐろはえ縄漁業」を守ることは私どもの使命です。

■岩手大学 資源経済・政策と数理資源管理研究室
資源経済、資源政策、資源数理解析による「漁業と寄り添う実学としての水産学」をめざし、研究と実践を国内外で展開している。

■株式会社シーフードレガシー
シーフードレガシーは、社会・経済・環境におけるサステナビリティを念頭に、海と人をつなぐ象徴としての水産物(シーフード)を豊かな状態で未来世代に継ぐ(レガシー)ことを目指す、ソーシャル・ベンチャーです。世界を網羅する幅広いネットワークや専門知識を活かし、国内外の漁業者、水産企業、NGO、政府等と協働して、日本の水産業に適した解決策を描きます。

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